PoEとは?仕組みとメリットについて解説
こんにちは!ネットワークカメラとIP監視カメラシステムのシステム・ケイです。
弊社でも扱っているネットワークカメラはおもに防犯カメラや監視カメラなどに利用されるので、カメラの設置場所が天井や屋外という場合が多い機器です。
設置のとき問題になるのが「電源」の確保です。
天井や屋外はコンセントがなかったりコンセントの設置が難しかったりします。
このような時に便利なのが「PoE」という技術です。
そこで今回は「PoE」について、基本的なことを解説していきます!

目次
PoEとは?EthernetやLANについて簡単に解説!
PoEとは?
PoE(ピーオーイー)はPower over Ethernetの頭文字を取ったもので、Ethernetケーブル(LANケーブル)で電力を供給する技術のことです。
PoEを使うと、本来はデータ通信のケーブルとは別に用意するはずの電源ケーブルが要らなくなります。
コンセントの確保が難しい天井や屋外などでも利用できるため、ネットワークカメラの設置や運用において重宝する技術と言えます。
ネットワークカメラ(IPカメラ)とは
EthernetとLANについて
上で「Ethernet」と「LAN」という言葉が出てきたのでこちらも簡単に説明しておきます。
「LAN」とは「ローカルエリア・ネットワーク」の略で、
比較的近い距離にある機器同士が相互にデータ通信できるようにするネットワークのことです。
この時、機器同士を接続するのに使用するのが「LANケーブル」です。

身近なもので言うと、パソコンを有線でインターネットに接続したいとき、ルーターやモデムと繋ぐために使用するケーブルです。
このように、いろいろな機器をネットワークに繋ぐ際、どのような機器でも繋げるように規格を統一したのが「Ethernet」です。
Ethernet規格で決めたケーブルはLANケーブルを含め3種類あるのですが、現在はLANケーブルを使うのが主流となっているため、「Ethernetケーブル = LANケーブル」と考えてよいでしょう。
PoE規格の種類
PoE
最大供給電力:15.4W
主な用途:ネットワークカメラ、IP電話など
2003年にIEEEから発表された最初のPoE規格です。
4対のツイストペアケーブルのうち、2本をデータ通信用、残り2本を電力供給用として使用します。
PoE+
最大供給電力:30W
主な用途:ネットワークカメラ、PTZカメラ、IP電話、無線LANアクセスポイントなど
2009年にIEEEから発表された、PoEのアップデート版と言える規格です。
PoE++
最大供給電力:60W(タイプ3)、99W(タイプ4)
主な用途:4K対応カメラ、無線LANアクセスポイント、デジタルサイネージ、高解像度ディスプレイなど
2018年にIEEEから発表された最新のPoE規格で、タイプ3とタイプ4の2種類存在するのが特徴です。
4対のツイストペアケーブル全てで通信と電力供給が可能となりました。
UPoE
最大供給電力:60W
主な用途:シスコシステムズ製のネットワーク機器
2011年にシスコシステムズ社から発表された独自規格です。
「PoEの2つの標準規格と電圧・電力クラスのお話し。」
PoEのメリット
設置場所を柔軟に選べる
前述したように、コンセントがない屋外や天井のような特殊な場所でも利用することができるため、PoE対応ハブやネットワークカメラを選ぶことで、電源がない場所や電源を設置しづらい場所でも電力を供給できます。
配線がすっきりする
通常の防犯カメラの場合、電源ケーブルやACアダプターなどが必要になります。
対してPoE対応のハブやネットワークカメラの場合、必要なものはLANケーブルのみのため、配線がシンプルになります。
電源工事が不要
ネットワークカメラの導入の際、コストの大部分を占めるのが工事費用になります。
その中の電源の設置工事が不要となるため、工事費用の削減につながります。
このようにPoEは、設置場所が特殊なネットワークカメラの設置において大きなメリットになります。
PoEのデメリット
導入コストが高い
PoE対応のハブやカメラは、非対応のものに比べて価格が高い傾向があります。
電源工事の必要がなくなるからといって、導入コストが大幅に安くなるとは限らないため、機器の選定は慎重に行いましょう。
距離の制限がある
LANケーブルの仕様上、PoEで給電できる距離は最大100mとなります。
広い施設で監視カメラを設置する場合、ケーブルの距離を事前に確認し、レイアウトを練る必要があります。
機器が熱を持ちやすい
PoE対応機器は、非対応機器に比べて熱を持ちやすい傾向があります。
特に給電容量が大きい機器は発熱しやすく、周囲の環境によっては機器が熱に耐えられなくなる可能性があります。
その場合、通気性を良くする、冷却ファンを使用するなど発熱対策をしなければなりません。
PoEには給電機器と受電機器がある
PoEには電力を供給する機器と電力を受ける機器の2種類があります。
ここでは、主な機器や中継器などの説明をしていきます。

給電受電両対応(PoEパススルー)ついては、こちらの記事を参考にしてください。
「PoEパススルーと給電方式」
給電機器(PSE)について
PSE(Power Sourcing Equipment)といい、電力を供給する側の機器のことです。
給電機器にはPoEハブやPoEインジェクターなどがあります。
PoEハブ(給電対応)は、複数のPoE対応機器との通信と電力供給が可能なため、オフィスや店舗に複数カメラを設置する場合などに利用されます。
PoEインジェクターは、PoE非対応のスイッチングハブとPoE受電機器の中継に使われるもので、家庭などで1台だけカメラを設置する場合などに利用されます。
(PoEハブとPoEインジェクターの違いについては、後ほど詳しくご紹介します。)

受電機器(PD)について
PD(Powered Device)といい、LANケーブルからの給電を受けコンセントなしで動作する機器のことです。
受電機器にはネットワークカメラ、無線アクセスポイント、PoEスプリッター、スイッチングハブ(受電対応)、IP電話機などがあります。
受電スイッチングハブは、電力の供給ができないため、コンセントからすでに電力供給を受けているパソコンなどをネットワークに接続するために利用します。
PoEスプリッターとは、PoE給電機器とPoE非対応のネットワーク機器の中継に使われるもので、LANケーブルからの通信と電力供給を分割し、PoE給電機器とPoE非対応のネットワークカメラ等の接続することができます。

| 給電機器(PSE) | 受電機器(PD) |
|---|---|
| PoEハブ | 無線アクセスポイント |
| PoEスプリッター | |
| PoEインジェクター | スイッチングハブ |
| IP電話機 | |
| ネットワークカメラ |
給電機器と受電機器は、PoEの規格の組み合わせによっては接続できないものがあるので注意が必要です。
例えば、給電機器の規格が「PoE」の場合、受電機器「PoE」は接続可能ですが、受電機器「PoE+」の場合は接続できません。しかし、給電機器が「PoE+」の場合は、受電機器は「PoE」と「PoE+」のどちらも接続可能です。
PoEハブとは?
PoEハブ(PoEスイッチ、PoEスイッチングハブともいう)とは、PoE給電技術を活かして、受電機器(PD)への給電・データ転送を行うネットワーク機器です。
PoEハブには、大きく分けて以下の2種類の方式があります。
アクティブPoE
ネットワークカメラに多く用いられる方式です。
接続機器がPoEに対応しているか確認した上で電力の供給を行います。
パッシブPoE
接続機器がPoE対応機器であることを確認せず、直接接続機器に電力を供給します。
アクティブPoEと比べて統一された規格がないため、各社独自の電圧・電流値で使用されることが多くなっています。
PoEインジェクターとは?
PoEインジェクターとは、PoE非対応のネットワーク機器に、LANケーブルを通じて電力を供給するための装置です。
PoEハブがない環境でもPoE機能を後からつけることができ、監視カメラシステムが既にある場合はPoEハブを導入するよりもコストが安く済む可能性があります。
しかし、PoEインジェクター1つにつきカメラ1台しか給電ができないため、カメラが複数台ある場合はPoEハブを導入する方が良いかもしれません。
PoEハブ:複数のカメラに給電可能

PoEインジェクター:1台のカメラにのみ給電可能

PoEハブの選び方
PoEに対応したスイッチングハブの選び方のポイントは以下の3つです。
- PoEハブと繋ぎたい機器のポート数は足りているか
- PoEハブの1ポートの給電能力がネットワークカメラの最大消費電力より大きいか
- PoEハブの給電電力が、接続するネットワークカメラすべての最大消費電力の合計よりも大きいか
給電能力や消費電力に応じて、価格が10倍近く変わることもあります。
「PoEハブとカメラの選び方での注意点知ってますか?」も参考になるかと思いますので、ご覧ください。
LANケーブルの選び方
LANケーブルはパソコンやゲーム機などをインターネットに接続するために使われることが多く、種類を特に意識しなくても問題なくインターネットに接続することができます。
しかし、PoE機器を扱う場合は対応していないLANケーブルもあるので、LANケーブルの種類について知っておく必要があります。
LANケーブルには「カテゴリ」という単位で分かりやすく性能にランク付けがされています。以下では「カテゴリ」について詳しく説明していきます。
LANケーブルの「カテゴリ」とは?
LANケーブルには通信速度を表す「カテゴリ」とよばれる規格があり、お手持ちの機器に合わせて対応するカテゴリのLANケーブルを利用する必要があります。
カテゴリは1~8までありますが、2022年現在販売されているのは主に「カテゴリ5・5e・6・6A・7・7A・8」の7種類です。
また、LANケーブルにはカテゴリ名が印字されているものがあります。ケーブルを確認するとすぐに見分けることができ、「カテゴリ5」や「CAT.5」などのように表記され、数字が大きくなるほど通信速度が早くなります。
アルファベットについては、「どこが規格・承認しているか」という意味合いもあるのですが、長くなるので今回は説明は省きます。
基本的にアルファベットがついているものの方がついていないものよりも性能が良いと覚えておくとよいでしょう。
| 最大通信速度 | 伝送帯域 | |
|---|---|---|
| カテゴリ5 | 100Mbps | 100MHz |
| カテゴリ5e | 1Gbps | |
| カテゴリ6 | 250MHz | |
| カテゴリ6A | 10Gbps | 500MHz |
| カテゴリ7 | 600MHz | |
| カテゴリ7A | 1000MHz | |
| カテゴリ8 | 40Gbps | 2000MHz |
PoEにはカテゴリ5e以上のLANケーブルを使用しよう
LANケーブルのカテゴリについて簡単に説明しましたが、PoEにはLANケーブルのカテゴリ5e以上のケーブルを利用しましょう。
カテゴリによって通信速度や伝送速度は異なるので、使用環境にあったカテゴリを選びましょう。PoEの規格によって対応しているLANケーブルも変わってきますが、現在の規格では5e以上のものを使っていれば問題ありません。
また、LANケーブルは上位互換性があるので、カテゴリ5e対応機器は5e~8までのどのLANケーブルも利用することができます。
また、カテゴリ5e以上のLANケーブルでも、そもそも「PoEに非対応」というものもあるのでPoEに対応しているかも確認しましょう。
販売店などで購入する場合ですが、カテゴリ5eについては「エンハンスド カテゴリ5」というような表記で販売しているものもあります。「カテゴリ5e」も「エンハンスド カテゴリ5」も同じものですのでどちらを購入しても問題ありません。

よくある質問
Q1. PoE対応ハブにPoE未対応の製品を接続しても大丈夫ですか?
A1. 問題なく使用可能です。
Q2. PoEによる給電は何メートルまで可能ですか?
A2. 規格上は最大100メートルです。しかし、LANケーブルの品質によっては給電できる距離が短くなる場合があります。
Q3. 長距離(100メートル以上)でLAN配線をしたいです。
A3. 通常100メートルが限界のところを、PoEパススルーにより延長することができます。電力によって伝送距離が異なるため、詳しくはお問い合わせください。
まとめ
PoEの基本についてお話ししましたが、今回押さえておきたいのは
- PoEはLANケーブルを利用して電力を供給できる技術
- コンセントがない場所でも電力の供給が可能
という点です。
今回の内容はネットワークカメラ初心者向けの基礎のお話しになりましたが、以下の記事ではPoEの機器やさらに詳しいお話をしていますので、ぜひご覧ください!
- 「PoEについて」
- 「PoEパススルーと給電方式」
- 「PoE対応ネットワークカメラの消費電力について」
- 「PoEの2つの標準規格と電圧・電力クラスのお話し。」
- 「PoEハブとカメラの選び方での注意点知ってますか?」
また、システム・ケイでは、
でもネットワークカメラをご紹介しています。こちらも併せてご覧ください!
